犬にとって野菜は必要?

人にとって、野菜は“健康に良い食べ物”として毎日食べるように心がけている方も多いと思います。では、犬にとって野菜は必要な食べ物なのでしょうか?

「そもそも、犬に野菜ってあげてもいいの?」「野菜を与えることで何か悪い影響はないの?」などと疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。 

今回は、野菜が犬に与える影響とその注意点についてお話します。


食物繊維の消化のメカニズム

「犬は野菜の繊維を吸収できないため、与えてはいけない」

という話を聞いたことがある飼い主さんもいらっしゃると思います。結論から言えば、与えても問題はありません。その理由について解説していきましょう。


食物繊維を消化するメカニズムをおさらいしましょう

はじめに、牛や馬、キリンなどの草食動物が食物繊維を分解するメカニズムを考えてみましょう。実は、草食動物は“自分の力だけ”では食物繊維(セルロース)を消化することは出来ません。草食動物は食物繊維を分解する酵素を持っているため栄養源として摂取することができるのです。このように繊維を消化するような体の仕組みになっているのが草食動物です。


「草食」「肉食」「雑食」動物の違い

人は雑食動物です。肉も野菜も消化し、栄養として取り入れることができる仕組みになっています。

実は、どんな動物でも、野菜に含まれるビタミンやミネラルを消化し体に吸収できたとしても、食物繊維(セルロース)を消化することは出来ません。従ってセルロースは不溶性食物繊維としてうんちに出てしまいます。

そこで牛などの草食動物は、微生物の力を借りて“発酵”させ、セルロースを消化吸収しているのです。それに対して人は、“煮る”という方法で生の状態では消化できないセルロースを溶かして消化出来るようにしています。

また、肉食動物と草食動物では食性の違いが腸の長さに現れています。草食動物は肉食動物に比べて腸が長いのですが、これは肉などの動物性食品は消化吸収が速やかであるのに対して、植物性のものは時間がかかるからです。


犬は人と同じ雑食動物

犬も人間と同じ雑食動物ですが、人より肉食に近い雑食動物といわれています。犬の腸は繊維を消化するような仕組みになってはいないので、野菜類の消化率が低いことが否めないのは事実です。しかし、犬の体内で消化されないということは、実は都合の悪いことばかりではないようです。

最近の研究では、食物繊維は犬の腸管の健康に役立っていることが分かりました。つまり「腸にすごく効果的!」とまではいかないものの、良い面もあるということが分かってきたのです。


食物繊維を食べることによる犬への効果

  1. 食物繊維は消化されないので、大腸内で「うんち」の量を増やし、腸壁を刺激するため便秘を予防することができる 
  2. 食物繊維は消化されないので、胃の中の「滞留時間」が長くなる = 腹持ちが良い
  3. 適度な量の繊維質を取り入れることで、小腸内の腸内細菌のバランスを適正に保つ


野菜を与える際に気をつけたいこと

次に、犬に野菜を与える際には、一体どのようなことに気をつければいいのでしょうか。


野菜ばかりを与えるとどうなるのか

大量に食べると、腸内細菌によって発酵されて、ガスが溜まりやすくなります。


与える量はどのくらい?

犬のダイエットが目的で野菜を与える場合は、ドッグフードを減らした分よりやや多めの量の野菜をフードの代わりに加えましょう。

ダイエットではなく、「毎日同じフードではかわいそうだから」ということであれば、ドッグフードの上に野菜を少量乗せるイメージでいいでしょう。


調理する際の具体的な注意事項

個体差はありますが、犬は軟らかい食感より野菜の硬い部分(キャベツの芯や大根など)を好むため、茹で汁は捨てて、茹でた野菜だけをドッグフードに振り掛けましょう。


与えてはいけない野菜

野菜に含まれるアルカロイドが犬に毒性を示すこともあります。

摂取してはいけない野菜ではありませんが、アルカロイドを含むという点で、摂取しない方が無難であると考えられる野菜は以下の通りです。

  • ナス科(ナス、ジャガイモ、トマト、ピーマン、ハバネロ)
  • マメ科(インゲンマメ)
  • ユリ科(ネギ、ニラ、ニンニク、タマネギ、アスパラガス、ラッキョウ)

しかし、あくまで摂取する量が重要であり、通常“舐めた程度”では大きな問題に発展することはあまりありません。ただし個体差がありますので、なるべく摂取しないように注意しましょう。


野菜を与えるのを控えた方が良い例

野菜や果物はアルカリ性食品で、アルカリ性ミネラルが多く含まれます。人ではこれらの食品を1ヶ月以上食べ続けていると、確かに尿のpHはアルカリ性に傾きます。犬では報告されていませんが、アルカリ性尿石症(ストラバイト尿石症)の治療をしている犬にはあえて野菜を与えることは控えた方が無難かもしれません。

ちなみに硫黄・塩素・リンなどのミネラルは酸性を示し、これらは肉類・魚・穀類に多く含まれます。


まとめ

犬は野菜類の消化率が低いながらも、効果的に与えると腹持ちが良く、食物繊維が腸管の健康に役立っていることが分かりました。今回ご紹介した注意点を把握した上で、効果的に愛犬の食生活に野菜を取り入れてみてはいかがでしょうか?