スタッドテイルについて

「ウチの猫の尻尾の付け根が汚れていて、さわると脂っぽくベタベタとしている…」

「ちゃんと拭き取ってもまたすぐに汚れてしまう…」

それはもしかしたら、猫特有の皮膚病である『スタッドテイル』かもしれません。

今回はこの病気について、詳しく説明していきます。


「におい付け」として使う、しっぽの分泌腺

猫の尻尾の付け根の背中側には皮脂腺、アポクリン腺と呼ばれる分泌腺が発達しています。この分泌腺はにおい付けとして使われるもので、特に去勢をしていないオスの猫で発達しています。

におい付けとは、通り道などに自分のにおいをつけて「ボクはココを通りましたよ!」ということを示し、後からきた別の猫がそれを嗅ぐことによって「ふうん、自分以外にもこんなヤツがここで暮らしているのか。」と知ることができる、猫同士の情報交換ツールです。

よくご機嫌な猫が人の足にスリスリしているのを見たことがある方も多いと思いますが、あれもにおい付けのひとつで、顔のひげの根元から出ている分泌腺を擦りつけて、この人はボクのお友達ということを示しているのです。


スタッドテイルとは

このしっぽの分泌腺から、何らかの理由で過剰に分泌している状態が『スタッドテイル』です。脂が大量に分泌されるため、その部分の毛はベタベタに固まり、脂っぽいきついにおいがすることもあります。汚れがつきやすくなるため、毛を掻き分けると黒っぽいワックス状のものが皮膚にべったりとついているのがよく見られます。

脂と汚れで毛穴が細菌感染を起こして皮膚炎になってしまうこともあり、そうなると皮膚が鋲(びょう)を打ったように凸凹になってしまうことから、スタッド(鋲)テイルという名前が付けられました。


発症しやすい猫種

しっぽの分泌腺は去勢をしていない若いオスで発達しているため、これらの猫で最もよくみられます。またペルシャやチンチラといった長毛種の猫で起きることが多いと言われています。


症状

しっぽが脂でベタベタしていることで、飼い主さんが気付くことが多いようです。皮膚炎を起こしているとその部分が痛痒くなるので、気にしてしきりに舐めたり噛んだりします。毛は次第に抜けていってしまい、細菌感染を起こすと皮膚は赤く腫れ、化膿することもあります。


治療法

『スタッドテイル』は原因がよく分からないことが多いために根本的な治療法はありませんが、男性ホルモンが関与していることが多いと言われているため、若いオスの猫に見られる場合は去勢を行うことも治療法のひとつです。

また治療を行う上で大切なのは、表皮の脂を取り除いて患部を清潔にすることです。ベタベタになってしまった毛はハサミで刈り取って、抗脂漏性シャンプーでこまめに洗います。細菌感染を起こしている時には抗生物質の飲み薬を使うこともあります。


シャンプー方法

猫は体が濡れることが苦手なので、基本的にお風呂が嫌いです。また猫自身が普段から、毎日自分で体を舐めてきれいにしているため、特にお風呂に入れる必要はありません。

ただし『スタッドテイル』の治療でどうしてもシャンプーが必要となった場合には、なるべく手早く済ませる必要があります。猫のシャンプーの方法については以下の手順を参考にしてください。


【準備】

猫を濡らす前に、必要なもの(薬用シャンプー、柔らかいスポンジ、大きなバスタオル、ドライヤー)をお風呂場と脱衣場にまとめておきましょう。

シャワーの適温は人のお風呂よりもややぬるめです。出だしは温度が安定しないことが多いので、あらかじめ少し出しておいて、一定の温度を保つようにしましょう。


【手順】

  1. まず患部をお湯でよく流し、お湯で取れる汚れを洗い流します。そして、皮脂を除去する力の強い薬用シャンプーを使ってよく洗います。患部以外の場所にシャンプーがつかないように、小さめの柔らかいスポンジにシャンプーをつけて洗うとよいでしょう。
  2. シャンプーの後はよくすすぎます。せっけんが残っているとそれがまた皮膚炎の原因となるため、しっぽの下側までよくすすぎましょう。
  3. 逃げられないように、お風呂場で十分にタオルドライを行います。皮膚炎を起こしている場所は皮膚が弱くなっていて痛みがあるため、こすらずに上からそっと押えるようにして水分を吸い取りましょう。
  4. ドライヤーで乾燥させます。ほとんどの猫はドライヤーが嫌いなので、逃げられないようにできれば「一人が押さえて、もう一人がドライヤーを使う」と良いでしょう。このときドライヤーの熱風で皮膚が熱くなり過ぎないように十分に気をつけましょう。


おわりに

『スタッドテイル』は比較的よくみられる猫の皮膚病ですが、猫が病変部を気にしてしまい、ざらざらした舌で舐めることによってより悪化させてしまうことがほとんどです。飼い主さんはちょっとした皮膚の変化も見逃さず、なるべく早く動物病院で診察を受けるようにすることが大切です。

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