猫が口を痛がる ~慢性口内炎~

猫に流涎、口を気にする、口が臭いなどの症状が見られたら口内炎になっているかもしれません。猫には慢性歯肉口内炎という特有の病気があります。どんな原因が考えられるでしょうか?対処法とともに、学んでいきましょう。


どのような病気か

猫には特有の難治性の慢性歯肉口内炎と呼ばれる病気があります。この病気は若い年齢(3~4歳頃)で発症することが多く、口の中が赤くただれたり、ひどい場合には潰瘍がみられ、出血したりします。

 

症状が出る場所や状態によって口内炎・歯肉炎・歯周病・破歯細胞性吸収病巣と呼ばれたりしますが、その判別をつけるのは難しく、併発することもあります。 


それぞれ簡単に説明します。

  • 口内炎 ・・・口の中の粘膜・歯肉・舌・唇や喉などが炎症をおこして赤く腫れたり、ただれたり潰瘍になったりします。急性の場合は患部から出血することもあります。
  • 歯肉炎 ・・・歯茎が炎症をおこし腫れている状態です。
  • 歯周病 ・・・歯肉炎が進行すると、歯茎と歯の間に隙間ができ、そこにどんどん歯垢が溜まることによってさらに炎症がひどくなり、骨が溶け始めます。
  • 破歯細胞性吸収病巣 ・・・猫特有の病気です。破歯細胞は本来、乳歯を抜けやすくするために歯の根元を溶かしてくれる細胞です。しかし、この細胞が何らかの原因で異状な働きをしてしまい、必要な歯を根元から溶かし始めてしまうのです。


症状

私達人間が一箇所でも口内炎になれば、口の動きが悪くなり、常に痛くて憂鬱な気持ちになって、痛みでご飯を食べるのも億劫になります。それが口の中全体に及ぶ血が出る程の口内炎だと考えると、猫の慢性歯肉口内炎とは想像を絶する痛みでしょう。特徴的な症状は、ねばねばしたヨダレが出て、口の周りが汚れ、独特の口臭がします。

全身の毛づくろいが上手にできないために、毛づやが悪くなり毛束ができたりします。さらに、手首の辺りが汚れたりします。これは、前足の先で口の汚れを取ろうとしますが、上手くできずにかえって手を汚してしまうからです。

活発ではなくなり、触ろうとすると狂暴になったりします。それは、口の痛みで触れられたくないからです。さらに食欲不振になったり、ご飯を食べている最中にギャッ~っと急に声をあげたりします。食べ物が痛い場所に接触してしまい、痛さのあまりに叫ぶのです。

重症では、痛みを我慢しながら食べることもできず、痩せて衰弱し、脱水症状になります。さらに水も受けつけず、唾液すら飲み込めなくなり、呼吸困難となることもあります。


原因

猫がなぜこのような慢性難治性口内炎になるのか、はっきりとした原因はまだ解明されていません。歯垢や歯石が付き、そこに付着して増殖していく細菌が関わっていることは間違いないと言えますが、歯垢・歯石の付着=歯肉口内炎とは言い切れません。そこで、他にいくつか考えられる原因をご紹介します。

難しい話に少しなりますが、猫ウイルス性鼻気管炎〈ヘルペスウイルス1型〉や猫カリシウイルス感染症といったウイルス感染が考えられています。実験で慢性歯肉口内炎に罹患した猫では、確かにこの2つのウイルス疾患をもっていることが多いというデーターがありますが、だからといってウイルス感染=歯肉口内炎でもないのです。

また、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスの感染は直接的な原因にはなりませんが、免疫力・抵抗力・治癒力を低下させるため、歯肉口内炎が治りにくくなり、症状がひどくなるといった症状の経過に関与しているとも考えられています。

他には全身状態に伴って口内炎を引き起こす場合もあります。例えば、腎不全によって尿毒症になると、唾液中のアンモニア濃度が高くなり口腔内がただれ、口内炎になります。


検査方法

検査方法は簡単で、症状や口の中を直接観察することによって診断できます。また、細菌感染の程度やウイルス感染の有無、そして全身状態(腎機能など)をみるために血液検査を行います。


治療方法  

色々ありますが、どれも対症療法(症状の原因となる疾患そのものを制御するのではなく、表面的な症状の消失あるいは緩和を主目的とする治療方法)でしかなく、残念ながら完治を望むのは難しいといえます。


  • 口腔内の細菌増殖を抑えるため消毒液を使った洗浄
  • 細菌をたたく抗生剤
  • 免疫力を抑制し、過剰に起きている炎症を抑えるステロイド剤(注射や軟膏)
  • 痛みの緩和と抗ヒスタミン効果がある抗うつ薬を使用することもある
  • 免疫力を調整するインターフェロン(注射や塗布)
  • 免疫調整/抗炎症作用があるラクトフェリン
  • 抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸の摂取
  • 炭酸ガスレーザーを照射することにより悪い組織を除去し、新しい組織の再生を促す
  • 全て抜歯する


以上の治療方法をいろいろ併用して行いますが、一番成果があるのは全抜歯です。全抜歯と聞いて可哀想だと飼い主さんは思われるかもしれませんが、細菌が付着して増殖できる場所がなくなるので、抜歯治療の予後は良いとされています。

いずれの治療方法でも、全身状態が悪かったり、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスの感染があると治療効果は低いと言われています。


予防法はあるの?

普段から口の中をケアしてあげることが大切です。しかし、歯磨きをさせてくれる猫ちゃんはなかなかいないので、消毒液で洗浄したり、歯垢の付きにくいフードを与えるなどがお薦めです。動物病院でも処方食として歯垢の付きにくいフードは置いてあります。また、ドライフードは柔らかい缶詰フードよりも歯垢が付きにくいという説もあります。とにかく予防としては、細菌の塊である歯垢を付着させないことです。


おわりに

人間にも猫にも厄介な病気の“口内炎”ですが、猫の場合は“ただの口内炎”というわけにはいかない大変な病気なのです。猫ちゃんの様子がいつもと違うと感じられたときには、いち早くかかりつけの病院へ相談にいきましょう。

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