おっぱいの腫瘍~乳腺腫瘍について~

栄養バランスの取れたごはんや、飼育環境などの向上により、ペットの寿命は以前と比べ延びています。しかしその一方で高齢犬・高齢猫が腫瘍にかかる件数も増えてきています。

特に犬・猫ともに多く見られるのが「乳腺腫瘍」です。

乳腺腫瘍の範囲が広いと切除する範囲も大きくなり、ペットへの負担も大きくなります。今回は、その乳腺腫瘍についてお話します。



犬と猫での発症の違い

犬の乳腺腫瘍

雌犬でもっとも多く見られる腫瘍で、全体の52%を占めます。9~11歳での発生が多く、良性と悪性の確率は50:50といわれており、悪性(ガン)の場合は他の臓器への転移もみられることもがあります。

発生は避妊手術の実施の有無と関係しており、未避妊の場合は避妊した犬に比べて発生率は約7倍になります。避妊手術を行ったタイミングも発生率と関連しており、初回発情前で0.05%、初回発情後で8%、2回目発情後では26%と言われています。


猫の乳腺腫瘍

猫では3番目に多い腫瘍で、雌猫でみられる腫瘍の17%を占めます。10~12歳での発生が多く、約85%は悪性と言われています。腫瘍全体のなかでの割合は犬に比べて多くありませんが、乳腺腫瘍が認められた場合の悪性の確率が高いことが特徴です。

腫瘍の発生割合は猫も避妊手術と関係があり、未避妊の場合の発生率は避妊した猫と比べて約7倍となります。1歳未満で避妊手術をした場合は発生率が下がります。


症状・病態

乳腺に一つ、あるいは複数のしこりが出来ます。悪性の腫瘍、ガンの場合は短期間で大きくなり、周囲組織に染み込むように拡がり、皮膚や筋肉に癒着します。転移は脇や内股のリンパ節に発生することが多く、続いて肝臓や肺などの臓器に発生します。

一方、良性の腫瘍はゆっくりと成長し、転移を起こしません。良性か悪性の確定診断を付けるには、腫瘍を切除して行う病理検査が必要です。


治療

まずは血液検査、レントゲン検査、エコー検査、細胞診検査などを行い、良性か悪性かの予測と手術の必要性を判断します。手術方法は、腫瘍部分だけの局所的なものから、広範囲の切除手術まで様々です。手術を行い、病理検査で悪性の腫瘍と診断されてしまった場合は、抗がん剤治療を行うことで再発や転移を抑えることが期待されます。


予防

乳腺腫瘍を完全に防ぐことはできませんが、前述のとおり避妊手術により発生リスクを低くすることはできます。避妊手術をどのタイミングで行ったかで、のちの乳腺腫瘍発生割合が変わってきます。


犬の避妊手術のタイミングと乳腺腫瘍発生率

猫についても1歳未満での避妊手術により高確率で発生を防ぐことができると言われています。1歳を超えると発生率が大幅に上がってしまうとの報告もあります。

まとめ

犬の初回発情は6カ月齢~8カ月齢頃(個体差にもよる)におこりますので、犬も猫も少なくとも1歳を過ぎる前に行った方がよいでしょう。若く健康なうちであれば麻酔のリスクも低いので、乳腺腫瘍の予防のためには早期での避妊手術をおすすめします。

万が一乳腺腫瘍が発生した場合は、状況によって手術や長期間の治療を行う必要があります。ただし腫瘍の大きさがが2~3cm以下の小さい段階で対応すれば高い治療効果が期待できます。日頃からペットのお腹をこまめにチェックして、早期発見できるようにしましょう。