猫の免疫不全症・猫エイズについて


エイズという病気は人にもあるので、病名を知っている方も多いのではないでしょうか。

では、このエイズという病気が猫にもあることをご存知でしたか?

今回は、猫のエイズの原因や症状、予防法についてお話します。


猫エイズってどんな病気?

猫エイズは人間と同じく、感染力自体はあまり高くない感染症です。

「猫免疫不全ウイルス」と呼ばれるエイズウイルスが感染することによって、免疫力が低下してくることが特徴です。しかし、そのウイルスを持っているだけで症状が出ないこともあり、その時はストレスや体調に注意していればまったく発症しないこともあります。長い時はそのまま症状が出ずに10年を超える場合もあるため、感染はしているけれども猫エイズを発症せずに天寿を全うする猫も少なくありません。

そのため、猫エイズの検査結果が陽性であっても「猫エイズ感染症」とは言わず、発症した時点で初めて「猫エイズ感染症」となるのです。


感染経路について 

すでに猫エイズに感染している猫からの接触で感染することがほとんどです。

このウイルスはもともと感染力が弱いので、粘膜同士や血液同士など直接的な接触でうつります。空気感染などでは、簡単にうつりません。一番多いのは猫同士のケンカによるものです。また交尾やお互い舐め合うことでもうつりますが、感染の可能性はケンカほどではないと言われています。

「人にも感染するのか」と疑問をもつ方も多いと思いますが、猫のエイズと人のエイズはまったく別のウイルスなので、人に感染することはありません。また、その逆もありません。


症状について

前述のように症状がまったく出ない猫もいるため、猫エイズの感染をすぐに見つけ出すのはむずかしいですが、症状として、感染した1ヶ月後くらいに一時的な発熱やリンパ節の腫れが見られます(急性期)。その後ウイルスはいったん攻撃をやめ、猫体内のリンパ球の中に潜んで眠ってしまいます。すると猫は病気が治ったかのように元の体調に戻り、2~3年、あるいはそれ以上無症状の時期が続きます。しかし、それは表面上だけのものなのです。

その後、やがて何かの刺激を受けて再びウイルスが活動的になります。そしてまた発熱やリンパ節が腫れはじめ、その後、ウイルスの感染によって免疫力が低下してくるため、様々な病気にかかりやすく、また治りづらくなります。

例えば、口内炎がなかなか治らなかったり、目やにや鼻水が出やすくなったり、下痢を繰り返したりといった症状などです。


もしこの病気にかかってしまったら?

この病気に感染しているかどうかは、感染後2週間以上経てば血液検査で簡単にわかります。猫を拾ってきたり、飼い猫でも外でケンカをしてきてケガをしている場合は、検査をおすすめします。

猫エイズウイルスは根本的な治療は難しいため、症状をやわらげる対症療法が主な治療になります。感染後、急性期以外であれば症状を改善させたり、延命させることは十分可能です。例えば口内炎を起こしたことで痛くて食べられなくなってしまっても流動食にするなど、飼い主さんが工夫をしてなんとか食べられるようになれば、体重が増え免疫力も高まり、貧血や栄養状態が改善することもしばしばあります。逆にこれをあきらめて放置してしまえば、徐々に痩せていき免疫力はさらに低下し、その結果、他の病気が発症して亡くなってしまうこともあります。

また、ストレスは免疫力を低下させる原因になります。できるだけストレスを与えないようにして栄養状態を良好に保ち、抵抗力の維持につとめて発症を遅らせるようにします。いわゆるリンパ球の中で眠っているエイズウイルスを刺激しないような平穏な生活をさせることで、ウイルスが再び起きて活動的になるのをできる限り防ぐのです。

さらに、もう一つ大切なことがあります。

猫エイズウイルス感染症のほかに、もう一つ免疫力を弱める感染症として「猫白血病ウイルス感染症」があります。この2つの病気両方にかかってしまうと、感染した猫の免疫力の低下は単独の感染に比べて早く起こることが知られています。

猫白血病ウイルスはワクチンで予防できるため、この病気からネコちゃんを守るためにも、エイズウイルスとの混合感染で病気を進行させないためにも、ワクチン接種は重要なのです。


予防法

この病気を100%予防できる方法は現在まだありません。この病気は接触感染のみで伝播していくので、エイズウイルスに感染した猫と接触させないこと、いわゆる外に出さないことが肝心です。日本にいる野良猫の猫エイズ感染率は10%を超えているそうです。飼い主さんは「外に出したら感染してしまう」と思うくらいの気持ちを持ちましょう。外猫の平均寿命は5~6歳で、この短命の大きな理由の一つとして猫エイズがあると言われているほどなのです。

もし愛猫が感染してしまった場合、それ以降は絶対に外へ出さないようにしましょう。たとえ無症状の時期であってもウイルスは体の中に潜んでいるので、その子が感染源となり他の猫と接触することにより、病気が広がっていく可能性があるからです。


まとめ

好きなときに好きなだけ外へ出る自由気ままな生活こそが、猫にふさわしい生き方のような気がしますが、昔とは違い家の外の世界では猫同士のケンカの他にも交通事故の危険や動物虐待に遭うケースもあります。

人間に飼われている猫にとって、室内で安全に穏やかに生きることが一番です。

たとえエイズウイルスに感染してしまったとしても、発症さえしなければ長生きすることができるのです。悲観的にならず、一日でも長く愛猫と楽しい日々を過ごすために、健康に気を配りましょう。


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