里親になるということ

「ペットを飼いたい!」と思ったとき、迎え入れる方法は、ペットショップで購入する、ブリーダーから直接譲渡してもらう、などいくつかありますが、愛護団体や保護施設から身寄りのないペットを引き取って、里親になるのも一つの方法です。今回は、ペットの里親になるということは、具体的にどういうことなのかについてお話をします。


不幸なペットの頭数

悲しい話ですが、全国では年間約2万4千頭にもなる犬や猫が、さまざまな理由で殺処分されています。このなかには、人に飼われたことのない野良犬や野良猫ばかりでなく、迷子になって飼い主が見つからない子や、やむをえない事情で飼い主から手放された子もいます。

このような子たちを少しでも救いたい、次の家族を見つけてあげたい、と活動されているのが里親会や愛護団体の方々で、日本全国で常に里親を募集しています。


里子となっているペットたち

里親を募集しているペットたちは、雑種の子が多いようです。ペットショップでは雑種は売っていないため、もし特定の品種の子を望まないのであれば、愛護団体や保護施設から探すのも一つの方法です。雑種は、純血種に多くみられる特定の病気(遺伝性疾患)にかかりにくく、身体が丈夫で賢いといわれています。

ペットショップで売られている子のほとんどは生後1歳未満の子ですが、里親を募集している子はそのような幼い子たちばかりとは限りません。大きくなってから元の飼い主から手放された子もたくさんいます。大人になってしまっているペットは、新しい飼い主に懐かないのでは?と不安に思われる方もいらっしゃると思いますが、人懐っこい子が保護されていることも多く、そうでない子も施設のスタッフが時間をかけて、愛情を持って接することで、人に心を開くようになった子もたくさんいるようです。


里親の条件

多くの愛護団体では譲渡する里親に一定の条件を求めています。それは、里子のペットたちがもう二度と悲しい思いをしないように、里親が愛情豊かで責任感のある飼い主になりうるかどうかを判断するためです。

具体的には、以下のような条件を満たしているかどうかを確認することが多いようです。

・飼育環境

住まいは一軒家もしくはペット可の集合住宅か

基本的に室内飼育できるか(猫の場合は完全室内飼育が条件であることが多いです。)

・家族構成

小さな子供がいない、また、留守をすることが多い一人暮らしではないか

家族全員が里親になることを望んでいるかどうか

・予防措置

ワクチンや避妊手術など必要な病気の予防措置をとれるか

脱走や迷子に対する予防措置をとれるか

・収入や経済状況

毎日の食事代や、病気になったときの動物病院代、グルーミングやトリミング代などの費用をまかなえるだけの経済力があるか


里親になる手順

各団体によって里親になる手順はさまざまですが、基本的には以下のような手順を経ることが多いようです。

1. 里親の申し込みをする

2. 里親として適しているかの審査を受ける

3. 希望のペットと面会し、場合によってはトライアル期間として短期間一緒に暮らしてみる

4. 正式に譲渡を受ける

始めに申し込みをする段階でこちらの要望を伝えます。たとえば、「すでに犬を1頭飼っているので、人や他の犬とも仲良くできる子を希望」や、「以前に飼っていた猫によく似た茶トラの猫を希望」などです。

引き取る際に、ペット自体にお金がかかることはほとんどありませんが、譲渡前に打ったワクチン代や手術費用などの代金が必要になる場合もあります。


家に迎える準備

家に迎えるときには、その子の性格や今までの境遇についてよく聞いておきましょう。特に、今までどういった生活をしてきたかはとても大切です。たとえば、外での生活が長かった子は、ゴミ箱を漁ったり、拾い食いをする癖があるかもしれません。また、今までたくさんの兄弟や姉妹達と暮らしてきた子は、一人でお留守番が苦手かもしれません。それぞれの性格を理解して受け入れてあげましょう。

迎えた後は、家の中に入れてもしばらくは静かに様子を見てあげましょう。住む場所が変わるというのは、ペットにとって大きなストレスがかかるので、それだけで体調を崩してしまう子もいます。施設からその子が使っていたタオルなどを譲ってもらっておくと、心を落ち着かせる助けになるでしょう。始めのうちは、今までとなるべく同じリズムで生活をさせ、食事もできれば今まで食べていたものを食べさせてあげるようにしましょう。


おわりに

家族のいない子を減らすために、不要な繁殖を減らすために避妊去勢手術を行い、迷子になってもすぐ飼い主が見つかるように、迷子札やマイクロチップを装着しておきましょう。

ペットと暮らす生活は、楽しく幸せなことばかりではありません。飼育環境や家族構成、経済状況をしっかりと考慮し、最期までペットが幸せに暮らせるよう、責任をもって家族の一員として迎え入れるようにしましょう。

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