ペットのいびきについて

ペットが無防備な姿で、ぐっすりと寝ている姿はとてもかわいいですよね。愛するペットはその寝息すらも愛しいものです。でも、中には心配している方や気になっている方がいらっしゃるかもしれません。ペットの中には確かにいびきをかきやすい種類の子もいます。そのいびきがあまりにひどい場合には何らかの病気を示していたり、いびきをそのままにしてしまうと、健康状態を悪化させてしまうことさえあるのです。

今回は、ペットのいびきに関して詳しく解説していきます。


いびきのメカニズム

いびきはどうして起きるのでしょうか。犬や猫が呼吸をするとき、その空気の通り道は、口もしくは鼻→咽喉頭部(のど)→気管→気管支→肺となり、通常であればこの通り道が十分に広いため、スムーズに空気が通過しています。ところが眠ってから筋肉が弛緩したときに通り道の一部が狭くなってしまうと、そこの空気が振動して音が出ます。これがいびきです。

人もペットも同じですが、口を大きく開けて中をのぞいてみたとき、上あごの奥に軟口蓋(なんこうがい)と呼ばれるやわらかい膜状の組織が見られます。人の場合は、さらに中央部が垂れ下がって口蓋垂(こうがいすい)と呼ばれることもある部分です。軟口蓋は通常、食べたものが鼻に逆流しないようにする働きがありますが、たとえばこれが長すぎて空気の通り道をさえぎっていると、その部分が空気が通る度に「ガガガガ…」と振動していびきとなります。薄い紙を唇に押し当てて息を吐くとブルブルとふるえて音が出ますよね。それと同じ原理です。

また、軟口蓋だけでなく、鼻の粘膜や気管の膜状になっている部分でも同様のことがおきて、音が出ることがあります。


いびきを起こす病気

ペットがいびきをする原因はさまざまです。最も多いのは、説明しました「軟口蓋過長症」という病気です。他にも以下のものがあげられます。

・猫ウイルス鼻気管炎などで、鼻炎を起こし鼻粘膜が腫れたり鼻水が原因で鼻の通りが悪くなった場合

・気管虚脱という病気で気管の膜状の部分がたるんで、通り道が狭くなった場合

・鼻や咽喉頭部に腫瘍ができた場合

・太りすぎて、喉のまわりに脂肪が蓄積してしまった場合 など


いびきを起こしやすい犬種

いびきは犬でも猫でも鼻のつぶれた短頭品種に見られることが多いようです。犬では、ブルドッグ、パグ、フレンチ・ブルドッグ、ペキニーズ、シー・ズー、ボストン・テリアなど、猫では、ペルシャやヒマラヤンなどです。これらの品種は鼻がつぶれているために鼻腔が狭く、また鼻が短い分、軟口蓋が長いため余計にいびきをかきやすいといわれています。

また、気管虚脱はチワワ、マルチーズ、ポメラニアン、ヨークシャー・テリアといった小型犬に多く見られ、特に年をとるにつれて悪化していくため、これらの犬種が高齢になってから、いびきをかき出したと言う場合には注意が必要です。


そのままにしておくと

短頭種のペットの生まれつきの軽いいびきであればそれほど気にすることはありませんが、年々ひどくなるようないびきは多くの場合、前述のような病気が原因であることがほとんどです。また、生まれつきの軟口蓋過長症も過度の運動や興奮、暑さによって症状が悪化することがあり、普段からいびきのような「があー、があー」という呼吸音が聞かれるようになることがあります。

このように普段から呼吸が苦しそうだったり、一瞬息が詰まるような症状が見られるようであれば、呼吸を邪魔している疑いがあり、そのままにしておくと全身の酸素が不足してしまいます。また、犬は汗をかくことができないため、通常呼吸をすることによって体の熱を外に放散しますが、気道が狭くなる状態になると、素早く熱を出すことができなくなるため、熱中症になりやすくなってしまいます。


もしひどくなったら

もし、いびきがどんどんひどくなるようであれば、獣医師に相談して何らかの治療を行ったほうがよいでしょう。原因として肥満が考えられるのであれば、まずはダイエットをすることが先決です。感染症による鼻炎が疑われるときには、抗生物質や消炎剤を使って治療を行っていきます。軟口蓋過長症もあまりにひどい場合は手術によって長すぎる部分を切り取るという方法があります。

そして、それと同時に暑い環境で寝かさない・興奮をさせない・ストレスを与えないなどのいびきを悪化させる原因を極力取り除くように努めましょう。

人でもいびきは「睡眠時無呼吸症候群」などを引き起こす原因として知られ、現在では積極的に改善策、治療が行われています。ペットの場合も、たかがいびきと考えず、ひどくなる前に一度動物病院で診てもらうようにしましょう。