突然発症する感染症~犬ニキビダニ症~

少数のニキビダニは健康な犬にも寄生していますが、ニキビダニが何らかの原因で異常増殖した結果、犬ニキビダニ症として発症します。発症原因には、遺伝的素因・免疫不全・代謝疾患・年齢・栄養状態・ストレス・発情などが関連しているといわれています。


原因と発症のメカニズム 

毛根を包んでいる毛包に潜む体長0.2~0.3ミリのニキビダニが原因です。生後間もない子犬が、ニキビダニが寄生する母犬の母乳を吸う時などの濃密な接触から感染します。しかし、発症するのはその中の約30%にしか過ぎないといわれています。

発症の引き金を知りたいところですが、その要因は複雑で、いまだ十分に解明されていません。

感染は一般的には母犬から子犬への濃密な接触感染(垂直感染)であり、感染している犬から他の成犬への伝播はないといわれています。もちろん、人には人のニキビダニが寄生するので、犬のニキビダニが人に寄生することはありません。


症状

発症は生後3~6ヶ月の子犬に多く、発症範囲が目や口の周り・肢端に限られていて、症状も軽く、約9割が自然治癒するといわれています。

厄介なのは、成犬での発症で、特に老犬に発症した場合です。症状には2つのタイプがあると考えられています。簡単に分けると病変が局所的なタイプ(A)と全身に及ぶタイプ(B)があり、次のような違いがあります。


A.局所型(皮膚がポロポロ落ちるような状態になるので、別名:落屑型ともいう)

慢性的に、緩慢に病状は進行します。初めは小さな限局性の紅斑と皮膚がボロボロしてきたり、脱毛斑ができたりします。初期症状は何の痒みもありません。

B.全身型(膿のたまった吹き出物ができるような状態になるので、別名:膿疱型ともいう)


初めの2~3日は局所型と同じ症状なのですが、病状の進行は速く、症状が出る範囲が急速に広範囲となります。病巣が滲出液で濡れてきて、湿疹様になり皮膚がただれます。この弱った皮膚に、二次的な細菌感染が起こり、痒みや痛み(膿皮症)が増してきます。発症後約1ヶ月で全身膿皮症となり、放っておくと気管支肺炎や敗血症で死にいたることもあります。

全身型でも初期に適切な治療をすれば、局所型に移行する場合もありますが、全身型(膿疱型)の多くは治療をしても、非常に治りにくいです。

両型ともまず見られる症状として目・口周囲と前肢端に起こり、次に患部とよく接触する場所から順に波及し、背中は通常最後に侵されます。


診断

特徴的な皮膚の状態を観察します。患部をつまみ、皮脂腺の内容物を削り取るように小刃で出血するぐらいまで掻爬して、顕微鏡でニキビダニの存在を確認します。初期の皮膚がツルンとした脱毛の段階では、ダニの数も少なく、検出できる可能性は低くなるので反復して検査する必要があります。


治療

  • 殺ダニ剤の定期的投与
  • 薬浴
  • 薬用シャンプー
  • 抗生剤の投与

 

以上の治療が基本となりますが、幼犬のニキビダニ症では限局的な発症が多く、その約90%が3~8週間で自然治癒するといわれています。また、サルファサリチル酸シャンプーによる洗浄のみで経過を観察することもあります。

老犬のニキビダニ症には積極的な駆虫が必要となり、その発症の背景をよく検討することが重要です。その他に基礎疾患がないかどうか検査し、他の疾患があればそれを考慮しながら慎重に治療を進めていきます。


殺ダニ剤のアミトラズで薬浴をし、フィラリア予防薬と同じ薬をフィラリア予防時の何百倍もの用量で定期的に投薬します。2次的に細菌感染を起こし、症状を複雑化させていることが多く、その場合は抗生剤も併用します。一度症状が表面的に改善されても途中で薬を止めないようにしましょう。


殺ダニ剤は幼ダニ、若ダニ、成ダニに効いても、卵には全く効きません。生き残った卵が孵化して繁殖し、再発してしまうのです。

また、殺ダニ剤には中毒性があり、使用には注意が必要です。高用量フィラリア予防薬はシェットランド・シープドック、コリー種、フィラリア陽性犬には使用できません。そのため、使用時には必ず獣医さんと相談しましょう。


予防

発症には遺伝的な素因、基礎疾患、体力や免疫力の低下が関係していることから、子犬期から十分な栄養管理と体力維持に努め、元気で健康に育てることが予防の第一歩といえます。

もし顔面や前足などに、脱毛などのニキビダニ症の初期症状らしき皮膚病変を発見したら、すぐに動物病院に連れて行き、適切な治療を受けさせましょう。症状が軽い子犬のケースでも治療には最低1ヶ月はかかります。

症状がひどかったり慢性化したり、再発した場合には、数ヶ月~半年、時には1年前後治療を続けなければならないこともあります。


ニキビダニ治療には飼い主さんの正しい理解と協力が必要です。根気強く、犬と一緒に治療を続けるようにしましょう。

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